周年事業は、文字通り企業の創業・設立からの節目に行う事業です。
では、何周年の時に実施すれば良いのでしょうか?50周年や100周年という大きな数字の節目にだけやればやれば良いのでしょうか?あるいは、1周年、3周年、5周年といった小さな数字の節目にもやったほうがよいのでしょうか?
実は、この問いには必ずしもこうでなければならないという答えは存在しません。50年、100年という大きな節目にしかやらないという企業もあれば、5年ごと、10年ごと、20年ごとに行なっている企業、あるいは、15周年、30周年という単位で行う企業もあります。もちろん誕生したばかりのベンチャー企業にとっては1周年でも3周年でも、まずは初めの大きな一歩です。
周年事業は、それぞれの企業の業態や取り巻く経営環境などによって考え方や位置付けや取り組み方が異なってまいりますので、ある程度の「型」のようなものはあっても、何年周期が相応しいといったセオリーはなく、これはもう各企業ごとの経営方針に委ねるしかありません。
ただし、周年事業のサイクルは千差万別であっても、一つの周年には必ずその前後にも何らかの周年があるということは変わりません。例えば「創業100周年」という企業にとっては非常に大きな節目があるとします。しかしその10年前には90周年という節目があるわけです。あるいはそのもっと前には「50周年」というもう一つの大きな節目があるわけで、その10年前にはやはり40周年という節目もあるわけです。つまり、周年はつながっているのだ、ということ。
周年事業を何年サイクルでやるかはさておき、一つの周年を「点」でとらえて単に記念事業を行うのと、その前後の周年を含めた時間軸の中で位置付けて持続的な事業として取り組むのとでは、同じ周年事業とは言え全く性質や意義の異なるものになるはずです。
わかりやすい例でたとえると・・・
事例1)100周年事業に向けたロードマップ
100周年や50周年という大きな節目のみを経営戦略上の重点ターニングポイントとして位置付け、大規模なコーポレートリブランディングを計画。その10年前である90周年や40周年を100周年や50周年に向けたロードマップの開始年として位置付け、共通テーマやワードで括り、10年間+αの継続的な事業として展開する。
事例2)10周年単位でテーマをリレー展開
周年事業は10周年単位で行うが、一つの周年を前後10年づつを含めた「20年間/3回の周年」単位で括り、テーマや課題をリレー形式でつなぎ、継続展開してゆく。
事例3)創業ベンチャーの第一次中期経営計画として
創業したばかりの企業として1周年、5周年、10周年までをまずは中期経営計画の中に予め予定事業として位置付け、効果検証を含めたかたちでPDCAを回しながら展開。それ以降の展開は、10周年の段階で次期中期経営計画として策定。
このように周年事業と周年事業を線でつなぐ場合に重要なのは、一つの周年事業に関する取り組みの全てを、運営マニュアルや事業報告書のような形で、社内の誰が見てもわかるように可視化・共有化することです。そうすることで、「前回はどんな経緯や背景や実行組織で、どんなコンセプトやテーマで、どんな施策や企画を行い、どんな成果・効果が上がったのか」が一目で次の周年担当者にわかり、それを踏まえて軌道修正や新たなアイデアを盛り込むことができるのです。
周年事業が従来の「記念祝事型」から、昨今のように「企業の改革・変革事業型」へとその位置付けや性格を変えてきつつある中で、周年を単純に「点」で捉えるのではなく、周年は次の周年に向かう序章であると考え「線」でつないで取り組んでゆくことこそが、これからの時代の周年事業の理想的な姿であると考えます。